素速い彼女と素早い太陽
最近メラゾーマうちすぎて少し暑くなってきました。
おかげで本来この季節に発生しないはずの害虫がなんか
ブワーっていっぱいいるわけですよ
で、これを私の責任にしてくるおっさんがいたので、しょうがなく駆除する事にしました。
標的は蜂とクモとカトンボを足して1で割ったかんじのやつ。
で、めっちゃ素早い。
ドラクエだったらハグレメタルくらい。
まず、製鉄所に特注した虫たたきで さっそくムーンサルトしてみましたが、
やっぱりあたりません。
そこで、私は思いつきました
カレーとラーメンは20秒以内に食い、遅刻しそうになったら学校まで1.34秒でワープしてくるような友人がいた。
あいつの素早さには私でも勝てない!
ということでさっそく電話。
プルルルル プルルル…
プルルって。あいつ固定電話なのかよ。
前にちゃんと携帯の番号おしえてって言ったのに!
『もしもしうんわかったじゃーね』ガチャ
「え、いや、まだなにも…」
「おまたせー」
はやすぎる。
というか早いとかいう問題じゃない。
小数点通り越してマイナスの世界に入ってるよこいつ。
とりあえず私が用件を言う。
「じゃあとりあえずこの蜂とクモとカトンボを足して1で割ったようなやつらを殲滅してくれ。」
「おわったよー。じゃーねばいばい」
「!?」
ほんとだった。あたりを何度見ても地に転がった死体ばかりで、
一匹たりとそれは飛んでいない。
かっこよすぎる。今度デートしよう。
男じゃないよ。
見た目だけならただの黒髪少女よ。
とりあえず家のおっさんに報告したら、
アタリマエノコトダロみたいな顔されたから、むかっとして灰にしちゃいました。
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翌日、うちの裏庭であのおっさんを散骨してた時、なんと台風がきているとテレビが言いだした。
既に鹿児島まで来ているらしい。
いそいでかけつけると、その軌道はすさまじいものだった。
まず沖縄の真上を通り、山口県あたりで2日くらい停止する。
その後、長野の山と岐阜の山にはさまれて身動きがとれなくなった台風は、
20日くらい東京とか新潟とか石川とかに行きながらうろうろするらしい。
さらにあとから来た2つ目の台風が長野県の溝にはまって、
そいつらがベイブレードはじめるんだそうだ。
この台風性格わるすぎ!
最悪!
バーーーーカ!
あ、そうだ。台風の598倍素早いあのひとならなんとかしてくれるかもしれない。
「よんだ?」
「うわっ…。う、うん。あの台風壊してきれくれない?」
「うん。いいよ。…じゃーね」
ここまでわずか1.5秒だ。人間なのかあれは。
すると、テレビがさっそくこの事をとりあげた。<速報です。あまりの速さで大気のオゾン層を身にまとってしまった少女が、突然台風に体当たりし、重体で発見されました。>
「!?」<台風の方は、ボブサップがリンゴを潰した時くらいぐちゃぐちゃになり、
なんかわかんないけど高気圧になった模様です。>
「なんだよそれ……」
確実に私のせいであった。
急いで鹿児島の病院へと向かう事にした。だが
私は、…いや
全ては遅すぎた。
「ここにいるのか!」
「…!!!」
「おい、しっかりしろよ!まだデートしてないのに!」
「……おう…」
「大丈夫だ安心しろ台風はぶっこわれたようだぞ!」
「フッ…。あんた、ハムスターがなぜすぐ死ぬかわかる…?」
「そんなの、ち、ちっちゃいからだろっ」
「ちがうわ……脈が…早いからよ…」
「ど、どういうことだ!おい!」
「…」
「おい」
「オゾン毒ごときに負けてんじゃねぇよ!」
「いくら速いからって死ぬのも早くする事ないだろがぁぁああ!」
とつぜん、まばゆい光を放ちそれは消えてしまった。
やはり人間ではなかったということか…
少し考えてみたんだ。
どうして光につつまれて消えてしまったのか
たしか、世界で一番速いのは光だ。
あいつは光の集合体、光が一つに集まるその様は、太陽と言ったほうが正しいかもしれない。
それが突然生命活動を始めたとすれば納得できなくもない。
それを裏付けるようにあいつには両親がいない。
俺の冷え性が一瞬で治ったあの笑顔は、まさに太陽そのものだ。
オゾンは太陽の強い光を飽和する役割を持つんだったっけ。
それを吸い込むとはつまり、自らの命を減らす事に繋がるのではないか。
太陽が死ぬ瞬間はすさまじい衝撃波と爆発が発生するというし、
ぼくの中ではそれはまさに衝撃そのものであった。
そんな太陽をなくした私は、それから数日で平熱が異常に下がり、気分が悪い日々が続く。
私が地球で彼女が太陽、小さい宇宙がそこにあった事に気づいた。